海外インディー・ロックの影響を多分に受けたサウンドとキャッチーな楽曲で音楽マニアを唸らせる新人バンドSuperyouが待望の1stアルバム「TODAY」をリリース!!
Contents
前身バンドの活動終了からSuperyou始動まで
--Superyouの前身バンド、Super Ganbari Goal Keepers(以後、SGGK)のお話から聞かせてください。SGGKは2010年発足から2021年まで続きましたが、松尾(翔平、Vo.&G.)さんと司(G.)さんはオリジナル・メンバーですか?
松尾:オリジナルメンバーは自分だけで、2011年に共通の友人を介して司さんが加入しました。
司:はい。最後の一年くらいでカラキ(Ds.)さんが入りました。
ーーカラキさんが入ったきっかけは?
カラキ:僕は元々youthmemoryというバンドをやっていて、2015年に立川のセプチマでSGGKと対バンしたのが初めての出会いでした。その後も一緒にイベントしたり、好きでライブに通ったりしてました。あと司さんと最寄り駅が一緒で飲みに行ったりと仲良くさせてもらってました。youthmemoryが解散するくらいのタイミングで声を掛けてもらって、最初はサポートで叩くことになりました。
ーーコロナ禍に入ってしばらくした頃にベーシストが脱退してSGGKは活動終了、Superyouになった経緯を教えてください。
松尾:漫画家になりたいので辞めたいとの彼の意見を尊重して。
司:その頃にSuperyouの1stシングル「1995」のレコーディングは始まっていましたね。SGGKで元々出そうとしていたんです。
ーー松尾さんがショウヘイマン名義で出した「Bayside EP」(2020年5月)もありましたね。
松尾:SGGKの活動休止中に、自分のソロとして作ったEPですね。ライブでもやりたいと思って、ドラムはカラキにお願いして、ベースはシャイガンティの中山滋さんにお願いして。
ーー2021年にSuperyouが発足して、ベースに井上はこねさんが加入しました。
司:新しいベーシストを探そうと考えていた時に、僕や松尾くんがUS、UKインディやギターポップのバンドが好きで、女性ベーシストが多いので女性のベーシストがいいんじゃないかと。ただ、そもそも女性の知り合いがいないんですよ(笑)。その中でベースを弾いている人といったら本当に2~3人くらい。で、はこねさんはSGGKのライブにも来ていてバンドもやっていて対バンもしていて。でも5年くらいまったく連絡をとっていない状態だったんですが、ダメ元みたいな感じで、勇気を振り絞って声をかけたんですよ(笑)。
はこね:嬉しい(笑)。その時は、細々と活動はしていたんですけど、毎月ライブがあるような感じでもなくて、ベースもそんなに弾いていなかったんです。なのでDMが来てびっくりしました。
司:誘い方も、いきなり「ベース弾いてください!」と言うと引かれるんじゃないかと思って、「今度ライブやるんで遊びに来てください」と。
はこね:普通にお客さん足りないのかなと(笑)。
ーーそう思いますよね(笑)。
司:ライブの時に直接話そうと思ったら、はこねさんが用事があって来られなかったんですね。このタイミングを逃したらまずいと思ってメールの主旨を切り替えて(笑)、加入するとかは一旦置いておいてスタジオに入りませんかと。
はこね:DMを見て動悸が止まらなくて。どうしてかというとSGGKの大ファンだったんですね。私が弾くの!? って。SGGKの「Cang Gang Pops」(2015年)も100回以上聴いていて、好きすぎてあまり入りたくなかったですね。私そんなに上手くないしって。
司:そこは、これまでと違うことがやりたいと伝えましたね。
松尾:その時点でメンバーが変わるだけでなくて、バンド名やバンドのイメージも変えてしまおうと残り3人で盛り上がっていたんです。そういうイメージも含めて、はこねさんが入ったら変わるんじゃないかと。
ヴィジュアルと歌詞の変化
ーーはこねさんはお仕事がフリーのスタイリストですが、Superyouのスタイリングや狙いは?
はこね:アルバム「TODAY」を出す上でSuperyouの魅力を伝えたくて。一番最初に入る情報として、見た目って大事じゃないですか。Superyouの音楽をできるだけ勘違いさせないように伝えたくて。メンバーに「Superyouって、どんなバンドなんですか?」とヒアリングして、90年代やUSインディというワードが出てきたので、そういうバンドをレファレンスとしてカメラマンさんに送りました。
松尾:写真のイメージも、日本のバンドによくある淡い感じではなくYuckのようなぱきっとした写真がいいよねという話がはこねさんからあって、それがいいなと思いました。
はこね:Superyouみたいなバンドって今あまりいないよねと結構言われるので、いさぎよく白バックでメンバーの顔がよく分かるように。
ーー最初の7inch「1995/Teenage Dræm」(2021年12月)をROSE RECORDSからリリースしてSuperyouとして活動することになってからの反響はどんな感じですか?
松尾:僕はビジュアルの変化をよく突っ込まれますね。SGGK時代の眼鏡で短髪から、急にロン毛で革ジャンとかでライブをするようになって。音楽の内容にそこまで激しく変化をつけたつもりはないのですが、見た目が音楽を聴くきっかけになってくれればいいなと思っています。
司:歌詞に変化があったとは思っています。SGGKでは内面をストレートに、男子中高生みたいなノリがあったんですけど、Superyouでは普遍的かつ抽象度が上がったというのが大きな変化かなと。ギターポップなどに影響を受けている楽曲の根底は変わっていないので、SGGK時代からのファンにもすんなり受け入れてもらえていると思います。
松尾:歌っている内容は、SGGKのキャラクターみたいなものがあって、それは一回崩したんです。同じ自分からしか出てこないんですけど、聴いている人に受け取ってもらう隙間を作るようにして。あと、メンバーに女性が入ったことで男子的な要素はもう成立しないなと(笑)。そういうこともあって、歌詞は観念的に、普遍的になりました。
ーーSGGKでは自虐的だったりナードな雰囲気が強くて、Superyouではそうした影や挫折を踏まえつつ前向きなイメージがより強く感じられます。
松尾:「1995」を書き上げた時に、主人公が前を向くストーリーにしたかったんです。個人的には、悶々としてそこから抜け出せないようなストーリーも好きなんですけど、そうじゃないことに挑戦したいというのがあったように思います。結構長くSGGKをやって型があったのを壊して新しく更新することに興味があって、意識的にやっています。
Superyouのサウンド
ーーSGGKは結構動きのあるベースラインで、Superyouになってからはボトムでバンドサウンドを支えるようなベースになりましたね。
司:SGGKのときも松尾くんってあまりどういう風に弾いてという指示はしてこなくて。その結果ああいうベースだったんですけど。
松尾:あんまりこういう音というこだわりはないんですけど、ツインギターというこだわりはあって、音の色付けはギターでできていたので、ベースがシンプルになっても逆にギターが引き立つし、十分成立するのかなと……後付ですけど(笑)。
ーーカラキさんはSGGKから在籍していて、ドラムはどんな風に変わりましたか?
カラキ:僕も元々SGGKが好きで、前のドラムの方は自分にないドラムのフレーズを多く出す人だったので、この人の代わりにはなれないと思って。SGGKの頃は自分でいいのかなという気持ちが強かったのですが、松尾さんがSuperyouでは新しいことをやっていきたいと言ってくれて、Superyouでは自分の引き出しや色、アイデンティティをオープンにすることを意識していますね。
司:結構音源とライブでアレンジを変えているのですが、カラキくんがライブのアレンジを多く提案してくれるので、それをみんなで形にするということをやっています。
松尾:SGGKでは絶対なかったタイプの曲が、ソロEPにも入れた「Approach」という曲で、出していいのかなと思っていたんですけど、Superyouでアルバムを作る時にカラキがこの曲入れたいですと言ってくれて。そこまで言うならと(笑)。
カラキ:Superyouになってからガツガツ意見言うようになりました(笑)
影響を受けているアーティスト
ーー個人的には「TODAY」を聴いて、TEENAGE FANCLUBの「Songs from Northern Britain」やサニーデイ・サービスの4作目「Sunny Day Service」のような優しく温かい印象を受けたのですが、アレンジや演奏で影響を受けているアーティストはいますか?
司:今回の作品ではギターの音作りやフレージングではThe Smashing Pumpkinsなどオルタナを意識しています。ビリー・コーガンが当時使用していたビッグマフ(ファズ・ペダル)の音色が出せるエフェクターを入手したりして。
松尾:楽曲毎にイメージは違うのですが、ツインギターというのがキーだと思っていて、TELEVISIONというバンドが好きで、歌の裏にギターのメロディがあるというのはよくやっています。SGGKの頃よりも突き詰めてできたかなと思っています。
司:僕は歌メロに近いフレーズを入れています。SGGKはネオアコっぽい曲も多かったのですが、よりオルタナっぽい曲や音色が増えたと思います。
松尾:そうだね。ミドルテンポの曲で轟音のギターが鳴るというアレンジが増えてきました。
ーーはこねさん、カラキさんは?
はこね:凄く好きなベーシストはいないのですが、VELVET UNDERGROUNDなど70年代・80年代のちょっと古い音やパンクっぽい要素があるバンドの音が好きで、エフェクターも使わずにアンプ直でサンダーバード(使用楽器)の音を出しています。
松尾:サンダーバードを弾いているのがSONIC YOUTHのキム・ゴードンみたいだなと思って、キム・ゴードンが表紙のベース・マガジンをプレゼントしたことがあります(笑)。
司:バンドのサウンド的にはヘヴィで骨太になりました。
カラキ:最近は誰かの影響は受けすぎずオリジナリティを出すようにしたいと思っていて、色々なドラマーのいいとこどりをしています。最近ではJD Beckというドラマーが好きで、衣装も可愛いし、テクニックも尊敬してます。
ーーアルバムではドラムの音色も曲ごとに違っていて、凝っていますね。
カラキ:メジャー寄りなサウンドで録りたくて、とにかくドラムをクリーンに、ギターなどと分離して録るように心がけました。
松尾:エンジニアの上條雄次さんが山中湖のスタジオで録ることを提案してくれて、天井が凄く高くてアンビエンスがしっかり録れるので、奇跡的に良い音になったのかなと思います。
ーーちなみに司さんはハード・ロックとか好きですか?
司:めちゃくちゃ好きですね(突然早口に)! 母親がDEEP PURPLEやLED ZEPPELIN大好きで、子どもの頃から家でかかっていて。ギターを弾き始めて最初に買った洋楽の楽譜がIRON MAIDENでした。ハード・ロック、ヘヴィ・メタルは練習材料として弾かなきゃいけないものだと何故か思っていて。
あと、スマパンのビリー・コーガンもハード・ロック好きなんですよね。オルタナで人気があった他のバンドでもDinosaur Jr.はハード・ロック、ヘヴィ・メタル要素があって、NIRVANAやPEARL JAMはそこまで好きじゃない感じがありますね。
松尾:僕は逆にハード・ロックは全然通っていなくて、それが今コンプレックスな感じはありますね。技巧的な部分には関心がないまま始めていて、むしろローファイなダニエル・ジョンストンのピュアな音楽が好きだったり、HALF JAPANESEのジャド・フェアが「ギターのコードは弾けないけど”コード”が繋がっていれば音は出る」みたいな言葉を残してくれたことで音楽ができるようになりました。技巧的でなくても、とにかくメロディがいいということは大事にしています。
アルバム『TODAY』の注目ポイント
ーーこの曲のここを聴いてほしい! という工夫はありますか?
カラキ:「Approach」はドラムに電子音を重ねていて、AKAI MPC(サンプラー)でフィンガー・ドラムを重ねています。
司:シティ・ポップっぽいけどギター・ロックという一癖ある感じに仕上がったと思います。
松尾:ギターの音色も僕のこだわりで、サイケデリックなモジュレーションエフェクトを使っていて、司さんには全体的にShakerというヴィブラート系の音の揺れがあるエフェクターを使ってもらいました。KHRUANGBINのような音をイメージして。
ーー「Radio Escape」のイントロもAMラジオをチューニングするような効果音をエフェクターで出していますね。
司:ディレイでラジオのダイヤルの表現をしようと思ってやってみました。
松尾:ネオアコっぽいけど音響的な浮遊感がある曲ですね。
司:この曲は、わりと大きめにアコギの音を重ねています。
松尾:JOY DIVISIONの「Transmission」という曲に対するアンサーソングのつもりで、踊ろうとしているけど踊れないという歌詞にしました。
あと、司さんの勧めもあって「ハローグッバイ」という曲に12弦ギターを入れましたね。元々スピッツを意識した曲だったのですが、僕が勇気がなくてできないことを「面白いんじゃない?」とアドバイスをくれたりするのもあって、大胆なアレンジができました。
カラキ:翔平さんが作る曲はSGGK時代から最高なので、Superyouというフィルターを通してもっと多くの方に聴いてほしいなって思います!
司:最近はライブでアルバムと違うアレンジも試しているので、ライブにも来てほしいですね。
曽我部恵一のROSE RECORDSからアルバム・デビュー!
ーーROSE RECORDS主宰の曽我部恵一(サニーデイ・サービス)さんはどのように作品に関わっていますか?
松尾:今回のアルバムの制作に関してはバンドで自由にやってみようと仰ってくれて、7インチ「1995」の時は選曲から一緒に考えてくれました。デモを20曲くらい聴いてくれて、この曲がいいとかアドバイスをもらいました。アルバムに関しては、曲順やジャケットの色味をどうしようとか、メンバーで決められない部分を相談しました。あとは曽我部さんがやっていたレコード店PINK MOON RECORDSでコーラスを収録させてもらって、マイクも貸してもらったり。本当にお世話になっています。
ーーアルバムのアートワークも内容に合ったポジティブなイメージになっています。
司:はこねさんがイラストレーターの髙木琢郎さんがSuperyouのイメージに合っていて凄く良いと紹介してくれました。
はこね:アルバムの曲を送ったら、「夕日に向かっていくイメージが浮かんできた」と言って、自分たちが思い浮かべていたような絵を送ってきてくれて、凄く感動しました。
ーー「TODAY」リリース後の反響はどうですか?
松尾:SNSをチェックしていて、人によって言及している曲が全然違うことがとても嬉しいです。リードトラック以外の曲についても熱く語ってくれている投稿を見た時とか。
司:ある意味ベスト盤的な感じになっているので。
松尾:結果として、そういうアルバムになりました。
高円寺との関わり
ーーSHOW-OFFは高円寺のタウンマガジンなのですが、高円寺のエピソードやイメージは何かありますか?
松尾:特に表現活動を始める人に寛容な街だと思います。SGGKも初ライブは無力無善寺でした。昔は高円寺でもよくライブに出ていたんですけど、最近は減ってしまって。またやりたいですね。
はこね:面白い洋服屋や雑貨屋がいっぱいありますね。「雑貨! 未完成」とか。
カラキ:前にやっていたバンドの練習でずっと「P.I.G.スタジオ」を使っていました。練習終わりに必ず「大将」か、ビールを頼むと餃子がついてくる「餃子処 たちばな」に行くっていう(笑)。古着も凄く好きで、エトアール通りのAnthonyはレディースの古着屋ですが可愛い服が多くて、よく見に行っています。
司:余談ですが、SGGK時代に高円寺フェスの日中のライブハウスイベントに出演したことがあるんです。お客さんは当時Twitterで知ったという人が一人だけだったんですが、その人が先日Superyouの大阪のレコ発ライブにも来てくれました。
これからの活動について
ーーこれからSuperyouでどんなことをやっていきたいですか?
司:目下ツアー中で、次は京都で3月17日にもライブがあります。
松尾:新曲をぼちぼちやっていきたいなと思います。
はこね・カラキ:フェスに出たい。フェスに出してください!!
カラキ:これを見ているフェスの関係者に……中央線界隈のフェスに出してください(笑)。
司:今まで聴いていなかった人とか、もっと多くの人にアプローチしたいですね。
ーー今日はありがとうございました!!
Information
Superyou 『TODAY』
1.ハローグッバイ
2.Daydreamer
3.サマーバケーション
4.Approach
5.1995 (Alternate Ver.)
6.波止場
7.Radio Escape
8.グリーンマインド
9.ドア
2024年1月17日発売
ROSE 307X ¥3,850(税込)
各種配信サービスで配信中!