聞き手:山藤 輝之(SHOW-OFF編集部) 構成:九條えり花(南極ゴジラ)
Photo:笠峰 新志
Contents
ゆかいな劇団「南極ゴジラ」
――早速ですが、南極ゴジラってどんな団体なんですか?
ユガミノーマル(以下、ユガミ):2020年に結成した、とびきりキュートな10人の劇団です! 元々僕らが関西で出会ったこともあって、大阪と東京の2拠点で活動してきたんですけど、段々東京がメインになりました。あ、僕は南極ゴジラのキャプテンをやっています、ユガミノーマルです!
こんにち博士(以下、こんにち):今は10人中9人が東京に住んでいて、1人取り残されている状況なんですけど(笑)。でも、もうすぐその1人も上京予定です。僕は脚本とか演出をやっています。
――皆さん役者だけの担当じゃないんですね。
ユガミ:お金がないので自家発電ですね。ちょっと、あの、今回は5人しかいないんですけど、他の3人にも自己紹介させてください!!
九條えり花(以下、えり花):ありがとうございます(笑)。私は制作広報を担当しています。どうやったらみんな私たちのことを好きになってくれるのかな、と模索中です!
揺音瑠香(以下、瑠香):劇中の音楽を担当しています。インスタグラムなどのSNSも運営しています!!
古田絵夢(以下、絵夢):私はグッズ制作やイラストを担当しています。まだまだイラストレーターなんて名乗るのはおこがましいですけど……。でも最近だと、小杉湯さんの小杉湯ギャラリーに出展させてもらったり、高円寺の北中夜市で手作りのグッズを販売したり。ちょっとずつ活動の幅を広げています。
こんにち:みんな役者もしながらね。頑張っています。
――全員関西人の劇団って、東京では珍しいんじゃないですか?
こんにち:僕らの少し上の世代ではいたんですけどね。解散しちゃって、もう確かにあんまりいないのかな。
えり花:でも逆に言えば、強みになっていると思います。劇中でも自然と関西弁になっちゃうし、ナチュラルな私たちを感じてくれやすいんじゃないかな。
瑠香:コントや漫才だと多いけど、演劇だったら珍しいのかも?
南極ゴジラと高円寺
――普段はどんなところで上演しているんですか?
ユガミ:東京では、最初は下北沢の小さなカフェから始まりました。キャパシティが17席とかで、それも埋まらなかった(笑)。
こんにち:それが段々と大きくなっていって、今では1公演で100席くらいのキャパシティかな。それを5回くらい上演したり。色々なご縁も重なって、様々な劇場でやらせていただくこともできました。それこそ、JR高円寺・阿佐ケ谷駅間の「高架下空き倉庫」とか。
ユガミ:僕ら最初から目を付けていましたからね!
こんにち:(笑)いやでもめっちゃいいんですよ! 安いし、人通りも多いし、会場の雰囲気も最高だし。でも高架下なんで、電車の音とどう付き合っていくかが最大の悩み(笑)。2回使わせていただいたんですけど、まだ音問題と向き合えていなくて……ちょっと最近は、やれていないかもですね。
瑠香:もったいない(笑)。
こんにち:そこさえ僕ら自身でクリアできれば……! ちょっと、頑張ります(笑)!
――高円寺との縁も深いんですね。
こんにち:そうですね。僕らは2020年に結成して、本当にコロナ禍のど真ん中で。「劇場に来てね!」と大々的にいうのもはばかられるというジレンマを抱えていました。そこで目を付けたのが、インスタグラムライブを活用した配信劇なんです。
えり花:全10話も撮って、毎週生配信して。撮影する場所も毎週違って……今思えば、大分チャレンジングな企画だったのかも!
瑠香:そこで撮影に協力いただいたのが、小杉湯さんですよね。
こんにち:あとはその時、僕の家も高円寺にあったので、僕の家で撮ったり。
絵夢:違う回で一軒家借りたのも、高円寺だったよね!?
ユガミ:ライブハウスを借りたのも、高円寺だった!!
瑠香:全部高円寺でまかなっている(笑)。
ユガミ:覚えているのが、どうしてもライブハウスを借りたかったんですよ。でもその時はコロナ禍だったから、どこのライブハウスも閉まっていたりして……本当に絶望的だったんです。でも、高円寺ALONEのオーナーさんだけが、「やったらええやん!」って言ってくれて!
えり花:待って、それ本当の話(笑)?
ユガミ:いや、関西弁じゃなかったかもやけど!!
瑠香:それはそうや(笑)。
ユガミ:でも、その高円寺ALONEが生配信劇の1話目の舞台だったから、本当に良いスタートダッシュを切れたなって。今でも感謝しています!
瑠香:劇の冒頭で「ここは高円寺ではありません」みたいなことを毎回言ったりね!
えり花:まんま高円寺だったけどね(笑)。
「すこしふしぎ」で「ゆかいな劇団」
――面白そうな企画ですね。ところで、南極ゴジラって普段どんな劇をしているんですか?
こんにち:普段はSF作品が多いですね。でも普通のSFではなく、藤子・F・不二雄先生が描く、「すこしふしぎ」な世界観を作っています。「ゆかいな劇団」と謳っているんですけど、僕たち10人を愛しく思ってもらえるような、そんな作品作りを心がけています。
瑠香:暗い話ってあんまりないですよね。
こんにち:そうね。暗い話はあまり書かないようにしてる。
――確かに、ここにいる皆さんも、すごくチャーミングというか。仲が良い雰囲気は伝わってきます。
えり花:実は私、去年の4月に滋賀の田舎から上京してきて。本当に不安だらけだったんですけど、みんな家が近くて心強いです。
絵夢:ほとんど中央線沿い。自転車で行ける距離だから、よく稽古終わりにご飯とか行くもんね。
瑠香:みんな阿佐ヶ谷、高円寺、吉祥寺とかですもんね。どんだけ会うねんって感じだけど(笑)!
えり花:私、普段は普通にOLでして。オフィスが御茶ノ水付近にあるので、高円寺に帰ってきたときの安心感はすでにあります(笑)!
瑠香:高円寺の雰囲気は大阪にちょっと似ているかも!?
こんにち:年中お祭りをやっているしね。
全員:(笑)。
劇団員に優しい街、高円寺
――ご飯も皆さんで行かれるんですね。高円寺だとどのあたりよく行くんですか?
絵夢:やっぱりウシータじゃない? 劇団員2人も働かせてもらっているから!
瑠香:そうですね。私も働いています! 営業後に会議で使わせてもらったり、もはや我々のアジトと化しているような。
絵夢:本当にご飯もお酒も安くて美味しくて……ありがたい。
こんにち:前の公演では、そのウシータで働いている人に舞台でトランペットを吹いてもらったりとか。その方は元々バンドで活動されている方なんですが、高円寺だからこその出会いなのかなとも思ったり!
瑠香:変なご縁ですよね!
ユガミ:大道具用の段ボール集めにも様々なお店でお世話になっていますね。
絵夢:ここは大きいのが貰えるとか、貰えないとか、もうわかる!
瑠香:把握してるんや(笑)!
えり花:あとは衣装を高円寺の古着屋さんで調達したりね!
瑠香:クロネコマリンさんとたんぽぽハウスさんね!!
えり花:これが300円!? って毎回びっくりしちゃうよね!
――どんどん高円寺を開拓していっているんですね。では、高円寺で立ってみたい劇場は?
こんにち:座・高円寺とかになるのかな。毎回候補に挙がるんですけど、まだご縁がなくて!
ユガミ:人気の場所でなかなかね。
こんにち:でも、座・高円寺ってお笑いのイメージが強いかも。コントとか。
えり花:お笑いのイメージもあるけど、オシャレな劇をやっているイメージもあるかも。でも南極ゴジラのお客さんの層と被っている気がするから、よくチラシは折込みしています。いつか座・高円寺の舞台に立ってみたいな!
南極ゴジラの楽しみ方
――南極ゴジラのお客様って、どんな人が多いんですか?
こんにち:幅広い層に見てもらっていると感じますが、若い人が多いです。僕たちは劇団っぽいことから外れたことをやっていこうという方向性があって。だから普段は音楽が好きな人とか、あまり劇に縁がない人とかに見てもらうことが多いです。!
えり花:「お話おもしろかったね!」というのが最高の褒め言葉ではあるんですが、「ストーリーはあんまり分からなかったけど、みんな愛しいな」とか、「今回は観に行けていないけど、チラシのビジュアル可愛いな」とか、そういう風に思ってほしいなと考えていて。そういう意味では、もう成功しているのかもしれません!
瑠香:チラシとかグッズとか写真とか。ビジュアルを褒めてもらうことも多いですよね。それが南極ゴジラの入口になっているのは感じる!
えり花:確かに。「今度フェス行くねん!」って友達に自慢できるような、そんなポップな存在になれたら嬉しいです。
南極ゴジラの夢
――では、今後やっていきたいことはなんですか?
全員:………。
こんにち:いやいや、あるでしょ。
ユガミ:あ、僕あれですね。お笑いの単独ライブやりたいですね!
瑠香:なんの話(笑)?
こんにち:ピンで!?
ユガミ:あ、もちろん皆にも手伝ってもらって!
瑠香:手伝うだけなの嫌やな~(笑)!
ユガミ:座・高円寺だと広すぎるからね。そこは最終目標に置いておきます。
えり花:配信劇をもう一度やりたい! 全国の皆に見てもらえるし!
絵夢:映画も撮りたい!!
瑠香:あ!あれは? 台湾公演!!
全員:ああ!!
――何故台湾(笑)?
こんにち:演劇が盛んなイメージがあるのと、あと高円寺の雰囲気と似ている気がして……。
瑠香:無理やり高円寺と繋げようとしてません?!
こんにち:違う違う(笑)。高円寺にも台湾にも、『なんでも受け入れる』文化が強いのかなって。受け入れて、それを発散させようというエネルギーもあると思うんですよね。
――高円寺の阿波おどりも台湾公演をやっていますからね。
こんにち:え! そうなんですか!!
ユガミ:僕らも切り込んでいきましょう!!
――今後さらに活動の場も増えそうですね。メンバーを増やす計画はあるんですか?
こんにち:それはないですね。最初9人でやっていて、次の年くらいにもう1人加入して。それで完全にピースがはまったかなと思うんで、この10人で頑張っていきたいです!
瑠香:台本も毎回あてがきですもんね!
こんにち:そうね。でも毎公演、『この人はこんな役もできるのかな?』っていう挑戦枠もあるよ!
絵夢:全員が挑戦枠だとね、クオリティーが担保できないから(笑)!
こんにち:そこは調整しています(笑)。
次回公演『(あたらしい)ジュラシックパーク』
――次回の公演も、もう決まっていますもんね。
こんにち:そうですそうです! 3月28日(木)~3月31日(日)で、東京都北区王子の王子小劇場という場所でやります。
瑠香:高円寺ではないけれど……(笑)!
こんにち:稽古は高円寺だから!!
絵夢:次回からは全員上京しているから、練習もしやすいね!
えり花:そうですね。全員上京一発目になるのか!
こんにち:作品は、『(あたらしい)ジュラシックパーク』っていって、『ジュラシック・パーク』をモチーフにした劇です。ティラノサウルスとか、映画の『ジュラシック・パーク』にメインで出てくる恐竜ではなく、その隅っこで働いている人たちの物語です。青春群像劇で、かわいいキャラクターたちもたくさん出るから、色んな人に楽しんでもらえると思います!
ユガミ:役者は僕たち劇団員10人だけ。「音楽とか映画は好きだけど、演劇は観たことがない!」という人にも、楽しんでもらえる内容だと思います。「南極ゴジラって、こんな劇団なんだ!」という発見の場にもなると思うので、ぜひ観に来てください!!
(あたらしい)ジュラシックパーク 特設ページ
https://nankyokugodzilla.com/new-jura.html
(あたらしい)ジュラシックパーク Vimeo配信
南極ゴジラ第5回本公演 ビデオ版「(あたらしい)ジュラシックパーク」 from 南極ゴジラ on Vimeo.
PROFILE
南極ゴジラ
2020年春に誕生した、ゆかいな劇団。9人+1台の劇団員で「どきどき、わくわく、ちょっとこわい」作品を制作中!
CONTACT
Mail:nankyokugodzilla555@gmail.com
Instagram:@gekitin555