「高円寺の渚ちゃん」、「あの娘のaiko」など数々の名曲を持つ前身バンド「住所不定無職」からメンバー・チェンジを経て、よりソウルフルに活動を続けるMagic, Drums & Love(通称:マジドラ)。
2023年末にリリースした「KEEP ROMANCE ALIVE」は各地のライブハウスでフロアを沸かせる渾身のキラー・チューンだ。
住所不定無職からのオリジナル・メンバー、YURINA (da GOLD DIGGER)、Jinta(=Jinta)の二人に高円寺での思い出や現在に至る活動を聞いた。
Photo by Yukiko Ono
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「住所不定無職」結成までの音楽ルーツ
――YURINAさんとJintaさんのご出身は?
YURINA:私は岩手県です。
Jinta:僕は神奈川ですね。横浜です。
――シティ・ボーイですね(笑)。どこまでが横浜なのか問題。
Jinta:横浜も横浜だから。桜木町なんで。
YURINA:厳しいんだよなぁ(笑)。
――初めて買ったCDは何でした?
Jinta:初めてというと、お祭りのときにB.B.クィーンズの「ギンギラパラダイス」と米米CLUBの「Shake Hip!」っていう8cmの短冊CDを買ってもらって。
YURINA:いいね~。
Jinta:親の影響が結構大きくて。父親が50年代、60年代のオールディーズとかビーチ・ボーイズとか好きで。普通のサラリーマンなんですけど。
――B.B.クィーンズ、米米CLUBって、どちらもソウル/ファンク寄りですよね。
Jinta:今にかなりつながっている(笑)。
YURINA:私はレコードや楽器が家にあるような環境じゃなかったです。お小遣いで買ったはじめてのCDはジュディマリです。
――その後、軽音楽部に入ったりするんですか?
Jinta:自分は親父がギターを持っていたので、中学校でLUNA SEAのコピー・バンドをやったのが最初ですね。SUGIZOは今でも大好きです。
YURINA:私は大学のサークルで初めて。
Jinta:めちゃめちゃ面白かった(笑)。
YURINA:4人でゆらゆら帝国(3人編成)のコピーバンドをやっていました。
Jinta:4人でブランキー・ジェット・シティ(3人編成)も。
YURINA:ちょっとやめて(笑)!
Jinta:映像を見せてもらって、ちょっと衝撃だった。普通はギターが二人いたら、一人がソロを弾くとき、もう一人はバッキングを弾きますよね。ところが、一人がソロを弾いている間、一人は待っている(笑)。ソロの半分くらいまで来たらもう一人がソロを弾き始めるんです。
YURINA:斬新すぎる(笑)。
高円寺の思い出
――ブランキーの中村達也さんもこの辺りですが、YURINAさんも高円寺に住んでいたことがあるんですよね。
YURINA:大学を卒業してからかな。古着も大好きだし、憧れがあって。純情商店街の辺りに住んでいたんですけど、駅前から家までの間に酔っ払いの方にいつも絡まれて怖くてダッシュで帰っていました(笑)。今だったら一緒に楽しく飲めたりしたかも知れないんですけど、当時は街の雰囲気に飲まれていましたね。
――高円寺でライブをやったりとかは?
YURINA:住所不定無職のときは、東高円寺のU.F.O.CLUBと下北沢のBASEMENT BARにメインで出ていました。CDを高円寺のレコードショップ「円盤」に置いてもらったり。円盤のチャート上位に入っているのを見て「やった~!」とか「今週はどうだ!?」とかみんなでね。
Jinta:最初の音源は、置くのを断られたんですよ。円盤で断られるものなんてあるんだ、って(笑)。
YURINA:持っていったらなんでも置いてくれるんじゃないんだ! って(笑)。
Jinta:キャベツを切っている音とか入っているCDを置いているのに! 2回目から置いてくれました。
YURINA:その後はずっと置いてくれて、U.F.O.CLUBと円盤には思い出がありますね。
初期衝動からの「住所不定無職」結成へ
――円盤も地方に移転しちゃいましたね。住所不定無職の結成の動機ってどんな感じでした?
YURINA:私が「あふりらんぽ」が好きで、今だったら技術がすごいってわかるんですけど、当時はめちゃくちゃに演奏して叫んでいるように見えたというか。「私にもできるかも!」と思って、同じサークルのヨーコちゃんに凄く華があったので、この子しかいない! と思って誘ったんです。それで一緒にスタジオに入ったんですけど、どこにマイクを挿すのかもわからないんですよ(笑)。録音したら、ずっとハウっていて凄い状態だったんですけど、その音源をJintaに渡したら、それがカッコいいと良い風に取ってくれて(笑)。それで3人でスタジオに入ってみたら曲も出来て。
Jinta:それまでは曲を作ったことがなかったんですけど。
YURINA:私も曲を書きたいし、曲を書いた人がギターを弾くというスタイルで楽器をスイッチするようになりました。ヨーコちゃんもベースとギターのダブルネックを弾くようになって。見つけた時、なんてウチらにお誂え向きの楽器なんだって思いました。
――Jintaさんはその時に住所不定無職以外の活動は?
Jinta:自分はザ・ボヘミアンズというバンドでドラムをやっていましたね。その前はハードコア・パンクのバンドでドラムを。ギターは住所不定無職が初めてです。
――わりと最初からキャッチーな曲を書いていますよね。
Jinta&YURINA:うーん、確かに(笑)。
YURINA:一番最初にJintaが書いた曲が「ひまらや」で、次が「I wanna be your BEATLES」。どっちも変な曲なんですけど、Jinta作れるんじゃん、って。私も「あの娘のaiko」っていう曲を作ったり。その時にDECKRECレーベルのネモト・ド・ショボーレ(CHILDISH TONES)さんがU.F.O.CLUBまで来てくれて、「うちで出そう!」みたいに言ってくれました。
――「あの娘のaiko」は、豊田道倫さんがカヴァーされていましたよね。
Jinta:豊田さんとヤマジカズヒデ(dip)さんが一緒に演っていました。
YURINA:住所不定無職の1枚目をdisk unionから出していて、ディレクターの金野篤さん経由で聴いてくれたみたいです。
Jinta:豊田さんには住所不定無職の企画にも出てもらいました。
音楽性の進化、そしてMagic, Drums & Love誕生!
――住所不定無職は最初ガレージ色が強くて、だんだん現在のMagic, Drums & Loveに通じる洗練されたダンス・ミュージック寄りに変わってきましたね。
Jinta:聴いている音楽はずっと一緒で、やれることが増えたというか無理やりやっているだけなんですけど(笑)。無理やりやってみようの幅が少しずつ広がっていて。マインド的には住所不定無職と全然変わっていないです。
――住所不定無職からMagic, Drums & Loveに変わるきっかけは?
YURINA:住所不定無職は解散していないんですけど、現時点で最後のアルバム「GOLD FUTURE BASIC,」を作ったときにメンバー4人で再現する前提で作っていなかったのでライブがあまりできなくなったというのがありました。
――その時の音楽性にふさわしい名前に変わった気はします。
Jinta:確かに。
YURINA:住所不定無職の最後のアルバムとMagic, Drums & Loveの音楽性は地続きなので中身はそんなに変わっていないけれど、ヨーコちゃんが卒業したこともあって変えようというモードになったのかな。
Jinta:わりと自然な流れだった気がする。
YURINA:だんだん曲が難しくなって、レコーディングではターシー(FUNK O’ney “The Diamond”)にベースを弾いてもらったりとかして、℃‐want you! も既にキーボードで加入していたので、少しずつMagic, Drums & Loveの形に近くなっていきました。自分達の音源に追いつこうと必死に模索していましたね。
――曲が難しくなってしまうことに対して、しんどいという思いは?
YURINA:めっちゃしんどかったです。住所不定無職の最後の頃やMagic, Drums & Loveの最初は全然思うように演奏できないから不完全燃焼でした。今は、そんな気持ち全くないですね。音源は音源、ライブはライブだ! と(笑)。
――Jintaさんはそういう他のメンバーの葛藤を感じたりとか?
Jinta:自分は何もわかっていないです。自分のことで精一杯なんで。
YURINA:ライブに関してはJintaは全然、人の音を聴いていない(笑)。私や℃‐want you! は割と俯瞰目線を持っているんですけど。でもそのバラバラな感じが面白いのかもと思っています。℃‐want you! が入ったことでキュッとなったというか。バンドに入る前からずっと住所不定無職を観に来てくれていて、年齢も下なのもあって、みんなの妹みたいな。でも凄くしっかりしているし、ギターも歌もいいし、無茶振りしたキーボードもみるみる上達して、みんなの刺激になりましたね。
――曲のアレンジはどんな風に作っているんですか?
Jinta:作曲・アレンジはほぼ自分です。デモの段階でほぼできていますね。
YURINA:その辺は他のバンドと違うかも。スタジオでセッションなんてしようものなら私が怒りますからね。「つまんないからセッションをするな!」って(笑)。
渋谷系アーティストやDJとの交流
――YURINAさんはニイマリコさんの合奏隊「ルー・ガルー」にも参加していますが、他の活動は?
YURINA:チャーベさん(CUBISMO GRAFICO etc.)と堀江博久さん(Cornelius etc.)のニール&イライザのツアーにルー・ガルーのベースのokanちゃんと一緒に参加したり。凄い経験値になりましたね。Magic, Drums & Loveの2ndアルバムからVIVID SOUNDでリリースするようになって、チャーベさんのプロデュースになりました。……こうして話すと、ほんと私たち長いことやっているね!
――ニール&イライザもそうですが、カジヒデキさんや野宮真貴(ex.ピチカート・ファイヴ)さんとも共演をされました。渋谷系の音楽はもともと好きだったんですか?
Jinta:自分は好きですね。
YURINA:私はそういうジャンルがあることも知らなかった(笑)。
――アレンジで色々な音楽の引用をしているのも渋谷系の影響?
Jinta:渋谷系というよりロックン・ロール的な影響ですね。
――ルースターズとか?
Jinta:好きですけど、特別ではない……特別好きなのはザ・ハイロウズとキングブラザーズです。
――ソウル・ミュージックの影響は?
Jinta:大学くらいからよく聴いていたんですけど、最近はそんなに聴いていないかな。
YURINA:私は好きですね。ギターが歪んでいると「ロックン・ロールはうるさいなー!」とか思っちゃうんで(笑)。住所不定無職で「JAKAJAAAAAN!!!!!」ってアルバム作っておいて言うなって感じですけど、ソウル・ミュージックを聴いてクリーンなカッティング心地いい〜ってなって。
Jinta:自分は静かな音楽もうるさい音楽も好きですけど、バンドで演るならド派手な方がいい。
――アナログ盤をリリースしているこだわりは?
YURINA:音もいいし、フィジカルのコレクションとしていいですよね。レーベルに絶対レコードを出さないと嫌だと言っている訳ではないけど……。
Jinta:ないけど、レコードを出せなくて配信だけと言われると、それはそれで辛い(笑)。
――DJが出るイベントに出演することも多いですよね。
YURINA:そうですね。Magic, Drums & Loveになってすぐにそういうイベントに呼んでもらったり、自主企画でも必ずDJを呼んだり。
Jinta:今は周りの友達のDJから影響を受けることも多いです。知らないレコードをいっぱいかけてくれて、DJの方がバンドマンより音楽が好きだなって思う。自分ではやらないです。バンドを辞めたらやりたいかも知れないけど、周りに凄い人がいっぱいいるから。
YURINA:あるある話だと思いますけど、DJがプレイしている間にバンドのサウンドチェックが始まって……みたいなのは嫌だなって思います。DJにリスペクトを持ってバンドがパーティーを企画するというのはMagic, Drums & Loveでやりたいことの一つとしてありましたね。
Magic, Drums & Loveのこだわりとこれから
――Magic, Drums & Loveはライブのファッションにもこだわりを感じます。
YURINA:最近は「それでステージに上がります?」っていう普段着バンドもいて、それでカッコいいバンドもいるけど、自分たちが好きなバンドはショー・アップされている人たちが多いので、自然と見た目も派手になっていくのかな。
Jinta:色んなパターンがあっていいと思いますけど、ロックン・ロールはパッと見てワッとなる、その瞬間が大事なので。
――Magic, Drums & Loveでこれからやりたいことは?
YURINA:今のメンバーでアルバムを作りたいですね。LPが出せたら最高ですね。
Jinta:普通に活動を続けたいですね。
YURINA:バンドが手段じゃなくて、目的なんです。
Jinta:音楽というよりバンドをやるということが、歳を取ってくるにつれてどんどん重要になってきました。
YURINA:人が集まって何かやるということが、コロナ禍も経て重要になってきたのを感じています。
――メンバーが多くて大変ということはありますか?
YURINA:寧ろいいことしかないです! ℃-want You! が2期メンバーと考えたらターシーが3期、Machi Good Chance Summer、EL FALCO OB-LA-DAは4期になるのかな? どんどんエネルギッシュに変わっていくのがめちゃくちゃ楽しいです。
Jinta:大人になったら、もっと余裕ある感じでやりたかったんですけど。渋いライブをJIROKICHIあたりで(笑)。
YURINA:ライブは年々激しくなっているね(笑)。今は、ウチらが集まって合奏しているっていうこと自体が超最高でしょ、って開き直ったことが凄く大きいです。以前は音源の通りにできないな、とか、欲しい音が鳴っていないな、という有りもしない正解に近づかなきゃいけないってセルフ・プレッシャーで楽しくなかった時期もあったんですけど、正解なんてどこにも無いんだ! って気持ちが変わりました。
――Magic, Drums & Loveのライブはお客さんも凄く盛り上がりますよね。
YURINA:はい! いい顔で観てくれるな〜、と、いつも思います。私もフロアで一緒に盛り上がりたい! 叶わぬ夢です(笑)。
――最後にSHOW-OFF読者の方に何かメッセージなどありますか?
YURINA:バンドやろうぜ! ですかね。今までやってきて一番そう思っているかも。一人でできることは今いっぱいあるけど、だからこそバンドって最高だよ! ロックン・ロールしましょう! って、臆面もなく言えるようになりました。
Jinta:一緒です。ロックン・ロールでしかない、という気持ちで常にやっています。
YURINA:ライブのMCで必ず「東京のROCK’N’ ROLL BAND、Magic, Drums & Loveです!」って言うんです。それは音楽性の事じゃなくて、できないことでも無理やりやってみよう! のマインドです。ロックン・ロールは元気が出るからオススメです。
――公式サイトでもプロフィールの最初と最後に「東京のROCK’N’ ROLL BAND」と2回書いてありますもんね。今日はありがとうございました!
PROFILE
Magic, Drums & Love
東京のROCK’N’ROLLバンドである。
2015年 前身バンド住所不定無職のメンバー、YURINA da GOLD DIGGER、°C-want you!、
Fasta Money Talk, 現Jinta = Jinta (ex. the zombies.co)にFUNK O’ney “The Diamond”、White Fire Shirohiが加わる形で「魔法とドラムと愛」の名の下に結成。
2020年 Machi Good Chance Summer、EL FALCO OB-LA-DAが新メンバーとして加入。
都内を中心に精力的にライブ活動中、自主企画もコンスタントに開催。
東京のROCK’N’ROLLバンドである。
Magic, Drums & Love 公式サイト
https://magicdrumsandlove.jimdofree.com
Information
EP
最新作「KEEP ROMANCE ALIVE」(VIVID SOUND)発売中!
DLコード付き7inchシングル 1,980円(税込)
https://www.vividsound.co.jp/item.php?lid=4540399323060
LIVE
7.14(日)江の島OPPA‐LA「LITIL」
7.18(木)荻窪 TOP BEAT CLUB「DECKREC NIGHT」